ディマンドリスポンスをもっと身近に。

日本におけるディマンドリスポンスの歴史

2011年3月に起こった東日本大震災。震災以降の電力供給不足の中、新たな節電方法としても注目されてきたディマンドリスポンスですが、国内での歴史を振り返ると1990年代までさかのぼります。
ディマンドリスポンスの最も基本的な手法といわれる「家庭用需要家向けの情報提供(電力消費量の “見える化” )」は、90年代後半、自宅の電力消費量を表示するシステムの効果を検証する「NEDOプロジェクト」として九州電力管内で実施されています。 また、同時期には電気料金を時変にするダイナミック料金制も大口需要家向けの実験として行われました。90年代から2000年代にかけ、「電力市場の設立を含む電力自由化」「実時間での電力取引を可能とするICTの進化(技術進歩)」「スマートグリッド化」「低炭素社会に向けた環境に対する意識変化」など、時代のニーズを背景に発展してきました。
そのような社会情勢を受け、電力の小売自由化の波も2000年に訪れます。同年3月、特別高圧電力(2000kW以上)に該当する一部の高層オフィスビルや工場を対象とした電力自由化が始まり、2004年からは中層ビル、スーパーなど高圧電力(50kW以上2000kW未満)へも自由化の範囲が拡大しました。 この流れの中で、ディマンドリスポンスに対しても、より大きな注目が集まります。2010年我が国初の本格的なスマートグリッド(次世代送電網)の実証実験(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市)の4地域を選定し、一般家庭、事業所などを結ぶ送電網をはじめ太陽光発電なども活用し、5年の事業期間をかけて低炭素社会のためのシステム構築を目指しました。 また、2013年からは国の実証事業を通じて、ディマンドリスポンス事業の育成や需要家のエネルギーリソースの活用基盤構築を行い、ディマンドリスポンスの普及拡大を実施してきました。
その後、2017年4月にネガワット取引市場の創設をきっかけに、需要家のエネルギーリソースを活用したディマンドリスポンスに伴うネガワットが新たな価値として創造されました。2017年4月より調整力公募における電源Ⅰʼおよび電源Ⅱ、2021年4月から段階的に始まる需給調整市場における三次調整力、2024年度以降運用開始予定の容量市場における発動指令電源において、ディマンドリスポンスに伴うネガワットでの参加・取引が可能となっており実取引量も着実に増加しています。今後、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、ディマンドリスポンスは、再生可能エネルギーの導入拡大にも非常に重要な取り組みと位置付けられており、更なる取組みの拡大が期待されています。また、これらの中心的な役割を担うアグリゲーター事業者に対しては、2022年度からライセンス制度が導入されることとなり、需要家のエネルギーリソースを活用したディマンドリスポンスを活用することで、発電事業者等のリソースと同様に供給力を提供する役割として、ますます重要視されてきています。

概要

電気は「貯蔵できない」という性質を持つため、常に需要と供給をバランスさせる必要があります。このバランスが崩れると電気の品質のひとつである周波数が変動してしまい、停電などの事故につながる恐れもあります。このような需給バランスを保つ役割は、これまで主に大型の発電機の稼働やピーク需要に合わせた電力システム構築よって担われてきましたが、脱炭素社会実現へ向け、エネルギーリソースを用いたディマンドリスポンスを活用することが期待されています。
ディマンドリスポンスは、需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させるソリューションです。
ディマンドリスポンスが電力システムに普及・拡大することにより、電力システム安定化への貢献、電気料金低減効果、再生可能エネルギーの普及拡大への貢献等が期待されております。
具体的には、下記のように、電力会社とユーザーの間にアグリゲーターが入り、エネルギーリソースの調整力を束ねて電力会社と取引を行うことで、ディマンドリスポンスの価値・サービスを提供します。

調整力公募

調整力公募とは?

2016年4月に施行された第2弾の改正電事法により、新しいライセンス制度が導入されたことを受け、一般送配電事業者が電力供給区域の周波数制御、需給バランス調整を行うこととなりました。
必要な調整力を調達するにあたっては、原則として公募の方法で調達することとなりました。これが調整力公募です。
電源Ⅰʼの算定イメージ

調整力の区分・要件

一般送配電事業者が調整力として活用する電源には、電源Iと電源IIがあります。
それぞれは、中央給電指令所の指示からの発動時間によって「-a、-b、ʼ 」の3種類に分類されています。
電源I 一般送配電事業者の専用電源としてあらかじめ確保する電源等
設備容量(kW)に応じた基本料金(固定費)と運転電力量(kWh)に応じた従量料金(可変費)を支払う。
電源II 小売電気事業者の供給力などと一般送配電事業者の調整力の相乗りとなる電源
一般送配電事業者が、小売電気事業者の電源などを従量料金を払って調整力として活用する。
電源I-a、電源II-a 発動時間が5分以内で、周波数調整機能を有する電源等(2017年度開発)での運用が可能。
電源I-b、電源II-b 発動時間が15分以内で、周波数調整機能は必須でなく需給バランス調整に活用出来る電源等。
電源Iʼ/電源IIʼ 10年に1度程度の猛暑や厳冬などの場合に需要の急増に対応する調整力
発動時間が3時間以内(Iʼ)/1時間未満(IIʼ)で、周波数調整機能は必須でなく需給バランス調整に活用出来る電源等
【出典】第61回 制度設計専門会合 資料5-1をもとにDRCにて作成

ディマンドリスポンスの活用

調整力公募において事業者も参加可能なカテゴリーが、電源Iに追加的に確保する供給力として募集される電源Ⅰʼ(イチダッシュ)です。このカテゴリーは、事業者が節電する需要抑制(ネガワット)で参加が可能です。2020年度から沖縄を除く9エリアに拡大し、さらに多くの事業者が参加できる環境が整いました。
ディマンドリスポンスはこの「電源Ⅰʼ(厳気象対応調整力)」で活用されています。
電源Ⅰʼの調達量の内訳及びDRのリソースの内訳
【出典】第61回 制度設計専門会合 資料5-1をもとにDRCにて作成
2021年度向け調整力公募では電源Iʼの調達量全体に占めるディマンドリスポンスの割合は約4割。ディマンドリスポンスのリソースの内訳としては、工場ラインの一部停止等の需要抑制が約8割、自家発等の稼働(逆潮無し)が約2割弱。若干ですが蓄電池もあります。
2022年度向け公募では、逆潮流アグリゲーションの参入が可能となるため、多様なリソースの組み合わせによる応札が期待されています。

調整力公募の実施状況 2022年度向け調整力の公募結果(電源Iʼ)

応札容量・落札容量
平均価格(円/kW)
※平均価格は落札された電源等の契約額の合計を落札容量の合計で除した加重平均として、委員会事務局が算定。
年度広域的調達結果
【出典】第68回 制度設計専門会合 資料 9ページをもとにDRCにて作成

容量市場

容量市場とは

■容量市場とは
容量市場とは、電力量(kWh)ではなく、将来の供給力(kW)を取引する市場。
将来にわたる我が国全体の供給力を効率的に確保する仕組みとして、発電所等の供給力を金銭価値化し、
多様な発電事業者等が市場に参加していただき供給力を確保する仕組み。
■容量市場導入の目的
容量事業者等に支払われる容量確保契約金額によって電源投資が適切なタイミングで行われ、予め必要な
供給力が確実に確保されるようにすること。
卸電力市場価格の安定化を実現することで、小売電気事業者等の安定した事業運営を可能をするとともに、
電気料金の安定化により需要家にもメリットをもたらすこと。
各市場の役割

容量市場の電源区分(メニュー)

容量市場におけるディマンドリスポンスの活用

容量市場においてディマンドリスポンスで参加が可能な電源区分が「発動指令電源」です。
発動指令電源の募集容量は、容量市場における調達容量に対し上限を4%までとすることと決められています。
2021年度約定結果では発動指令電源は全体の3.2%を占めており、上限容量に対し119%の応札(落札率84%)となっています。
電源等の区分別の応札容量

容量市場の取引状況

2021年度 容量市場メインオークション(対象実需給年度:2025年度)は、以下の結果となった。
約定総容量:1億6,534万kW(165,342,148kW)
エリアプライス
  • ・北海道エリア:5,242 円/kW
  • ・北海道・九州エリア以外 :3,495 円/kW
  • ・九州エリア :5,242 円/kW
経過措置を踏まえた約定総額 :5,140億円(514,010,589,965円)
特記事項
  • ・約定処理上の市場分断により北海道、九州、北海道・九州以外のブロックに分かれた。
  • ・エリアプライスの関係から、北海道エリア・九州エリアではマルチプライス方式が適用された。
  • ・発動指令電源の応札容量は、メインオークションにおける調達上限容量を超過した。
■約定結果
上記のうち、DRが参加可能な発動指令電源は、475万kWで、全体の3.2%の量
■約定結果(エリア)
※マルチプライスでの約定あり

需給調整市場

需給調整市場とは

一般送配電事業者が電力供給区域の周波数制御・需給バランス調整を行うために必要となる調整力について、多くの電源等への参加機会の公平性確保、調達コストの透明性・適切性の確保の観点から、公募により調達を実施されています。
より効率的な需給運用の実現を目指すため、公募調達に加え、2021年4月よりエリアを越えた広域的な調整力の調達を行う「需給調整市場」が開設されました。
※ 沖縄電力株式会社の供給区域を除く。
需給調整市場においては、市場運営者である各エリアの一般送配電事業者は、調達を希望する調整力の必要量を提示し、調整力の提供事業者は当該必要量に対して入札を実施します。
【出典】送配電網協議会HPをもとにDRCにて作成
(参考)調整力公募から需給調整市場への流れ
2021年度は三次調整力②のみ市場取引が開始されているが、2022年度以降市場メニューが拡大される予定です。

需給調整市場のメニュー

2021年度開設の三次調整力②および2022年度開設予定の三次調整力①については、ディマンドリスポンスの参入が可能です。2次調整力①、②および一次調整力については、現在検討中です。
  • ※1 簡易指令システムと中給システムの接続可否について、サイバーセキュリティの観点から国で検討中のため、これを踏まえて改めて検討。
  • ※2 事後に数値データを提供する必要有り(データの取得方法、提供方法等については今後検討)。
  • ※3 中給システムと簡易指令システムの接続が可能となった場合においても、監視の通信プロトコルや監視間隔等については、別途検討が必要。
  • ※4 30分を最大として、事業者が収集している周期と合わせることも許容。
  • ※5 簡易指令システムの指令間隔は広域需給調整システムの計算周期となるため当面は15分。
  • 注)全ての商品において、商品ブロック単位(3時間/ブロック)で取引される。
【出典】第24回 需給調整市場検討小委員会をもとにDRCにて作成

需給調整市場におけるディマンドリスポンスの活用領域

2021年度から取引が開始となった取引メニュー「三次調整力②」はディマンドリスポンスでの参加が可能です。
2021年4月~8月の期間における三次調整力②のリソース種別ごとの応札量ならびに構成比においては、LNG火力、揚水で約8割を占める一方、少数ながらもディマンドリスポンス・VPP事業者からの一定数の応札は存在します。
三次②の応札構成(2021年4月~8月)
※その他には、DR、VPP、蓄電池、一般水力が含まれる。

三次調整力②の取引量

2021年4月1日より三次②の市場取引が開始となりました。4月1日~9月14日※1までの実績は、TSOによる募集量29,123MW/日、発電事業者等からの応札量41,888MW/日に対し、落札量が26,039MW/日となっています。
月別の三次②取引量
出所)送配電網協議会提供の情報をもとに事務局にて作成 
  • ※2 4/13、5/5はシステムトラブルによる市場停止のため、取引実績なし
  • ※3 対象期間:2021年4月1日〜9月14日

三次調整力②の約定価格

2021年4月市場開設以降、平均落札単価(9エリア加重平均) 1.8円/kW・30分前後で推移していましたが、7月2.37円/kW・30分、8月2.03円/kW・30分と、2021年の第一四半期より高値で推移しています。 他方、9月は、1.55円/kW・30分と、8月以前より低下しています。
三次②の落札量と約定単価

海外での導入事例

欧米等の先行諸国では、すでにディマンドリスポンスは容量目的、調整力目的で使用されております。
欧米諸国ではディマンドリスポンスが多く活用している国も見受けられます。
米国・英国におけるディマンドリスポンスの活用状況
■米国
【出典】2020 Assessment of Demand Response and Advanced MeteringをもとにDRCにて作成
諸外国の調整力市場におけるディマンドリスポンスの活用状況
■各国の調整力の種類
■三次調整⼒相当の調整⼒に関する要件およびDR等取引状況
注1:年間を通した時間当たりの平均調達量  注2:事前資格審査通過リソースの量を記載
■一次・二次調整⼒相当の調整⼒に関する要件およびディマンドリスポンス等取引状況
注1:年間を通した時間当たりの平均調達量  注2:FFRを含めたFR全体の取引量を記載   注3:事前資格審査通過リソースの量を記載